ネット広告は誰もが利用できる便利な存在です。一方、ネット上のサービスには不正行為が常につきまといます。ネット広告も例外ではなく、広告主泣かせの広告詐欺、いわゆる「アドフラウド」が蔓延しているのが現状と言っても過言ではないでしょう。では、アドフラウドとは具体的にどんな詐欺なのでしょうか。また、広告主ができる対処法はあるのでしょうか。
アドフラウドについて
アドフラウドとは、ネットの広告詐欺のことです。その手口はさまざまですが、ボットを使用した自動プログラムによるクリック数の水増しやインプレッションを不正に増加させるなどの手口があります。いずれにせよ、アドフラウドは広告主にとって邪魔でしかありません。正しい広告効果を分析できないほか、広告費が余計にかかるなどの被害が考えられます。
もちろんアドフラウドは犯罪行為なのですが、最近特に頻発しており、なかには故意ではなく加担してしまっている場合もあります。アドフラウドから身を守るためには、まず、アドフラウドの手口を知るとともに、きちんと対処法を講じることが大切です。
アドフラウドの種類をより詳しく述べると、たとえば、広告領域を過度に広げる手口があります。検索スパムを使って、一面広告からなるようなページへとユーザーを誘導する仕組みです。そんなページにうっかりアクセスしてしまうと、意図せずとも間違って広告をクリックしてしまうこともあるでしょう。そうやってトラフィックを不正に増やすのが目的です。検索しても正常なページと同じように表示されるため、実際にアクセスするまで気づきにくいという危険があります。
人目につきにくいページの一部分に、広告を隠すような手口もあります。ユーザーがそれと気づかず広告をクリックしてしまうことを目的とした手口ですが、広告主にとっては、広告がたくさん表示されるほど費用もかさんでしまうのが痛いところです。CSSを不正に操作して広告が挟み込まれることがあるため、これを防ぐには、なるべくサイトの作りをシンプルにするなどの工夫が考えられます。
サイトのリロードを数秒単位の高頻度で繰り返し、広告を多数表示させる手口もあります。リロードが短時間に繰り返されるとサーバーには負担がかかりますし、広告表示が多くなるほどその費用もかさむなど、広告主にとっては損失しかありません。
よりたちの悪い手口に、ブラウザをプログラミングして、広告のクリック数やインプレッションを自動的に増加させるといった方法があります。この手口はプログラミングができる人物が仕掛けているため、その発見もプログラミングのスキルがある人でないと難しいでしょう。対処が難しい手口です。
さらに面倒なのが、個人のデバイスに不正プログラムをインストールさせ、強制的に広告を表示させるようなやり方もあります。ユーザーが使っているデバイス自体に細工をするため、広告主としては対処が非常に難しい手口です。
アドフラウドへの対処法
アドフラウドの手口のなかには、気づくことすら難しく対処が非常に難しいものもあります。ただ、最近ではアドフラウドへの対抗策も開発されているため、アドフラウド用の対策システムやツールを導入することで、独力では対処しようのないアドフラウドを撃退することも可能になっています。もちろんシステムやツールを導入するには、新たな費用が発生してしまうわけですが、アドフラウドの被害にお悩みであれば一考の価値はあるでしょう。
なるべくなら高額なツール等を導入せずに対処したい場合は、以下のような方法が考えられます。
まず、DSP事業者の選定の段階から注意することです。たとえば、自社でアドベリフィケーション(広告の効果を検証すること)のツールを導入している事業者であったり、JICDAQ(デジタル広告品質認証機構)の加入事業者であったりするほど、アドフラウドへの意識が強い事業者だと判断できます。
広告主ができることでは、ユーザーの行動をタグを利用してリアルタイムで監視する方法があります。たとえば、同一のデバイスを使って膨大なアクセスを行っているようなユーザーが見つかれば、アドフラウドではないかと気づきやすいです。リロードが短時間に高頻度で繰り返される場合でも、しっかりモニタリングしていれば発見しやすくなります。
広告を配信してからも、その効果をしっかり分析していれば、アドフラウドがあった時には気づけるはずです。クリック率の異常値や未払いや不正注文の件数などのデータから、このサイトは怪しいといったことは判断できるでしょう。それがアドフラウドによるものなのかは、また別の見極めが必要になるものの、怪しげなサイトをブラックリストにまとめ、広告の出稿をやめるなどの対処はしやすくなるでしょう。
まとめ
手口が巧妙化するアドフラウドに対して、その対処法も次々と開発されています。ところが、新しい対処法ができると、それに対抗してさらに新たな手口が生まれるのは、アドフラウドに限ったことではありません。しかし、何らかの対策を講じない限りアドフラウドのカモとなってしまうだけですから、継続的に情報を収集し、逐一対処していくしかないでしょう。